‘the Dream with the Occasional Real’ 1-4 -My Original Japanese Novel-
Welcome to this page! 2017年頃に書いてみた小説もどきを少しずつ投稿してみます。
I will put little by little my Japanese sentences like a novel I wrote around 2017.
日本語のタイトルは「夢、ときどき現実」です。こちらは日本語の小説もどきを、縦書機能を用いて公開しているページになります。紹介ページ(英語)は以下からどうぞ。
Introduction of Myself and This Web Site (in English)
※ユーザーが投稿するコンテンツ等(引用文献等を除く)の著作権はユーザーに帰属します。以下の縦書文章も同様です。(やみぃーノけんChan (Ken-aka-Yammy))
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This is my original Japanese short novel series.
The story is written in Japanese and displayed vertically.
「夢、ときどき現実」(©やみぃーノけんChan (Ken-aka-Yammy))
1 部屋は狭いのにどうして部屋を片付けるのに時間がかかるのか。俺は実家で自分の部屋を片付けているときに見つけた約五年分の日記帳に手を伸ばした。一冊一年分のデスクダイアリーを日記帳として使っている。何となくその日記帳を机に重ねて置いてみる。いつ頃だろうか。書くことが好きで、夢中になれると気づいたのは……。 2 いつの間にか今年も8月半ば。まだまだ暑さが厳しい。俺は盆休みを利用して帰省した。正直言ってこの御時世に仕事が休みっていうことは有り難い。いや、これが本来の姿なのかもしれない。まぁ、ちょっと仕事をもって帰っているのだが。 俺は間違いなく休みがとれているであろう大学の同輩、内藤に「ご飯に行かないか」とLINEで誘ってみた。内藤は俺たちの地元で小学校教員をしている。顔が広いから他の人との約束があるだろうと思ったが、幸いなことに内藤はすぐにいい返事をくれた。 「俺、最近いい店見つけたんだよ。そこに行こう!」 何かのゲームアプリで珍しいモンスターを見つけたかのようなテンションで絵文字とスタンプを多用してきた。 内藤ってこんなキャラだったっけか? 俺は待ち合わせの駅へ向かった。午後六時過ぎ……陽が傾き始め、蝉の合唱も終わる時間帯。既に待っていた内藤と落ち合う。俺は彼に身を任せた。 「えっ? チェーン店じゃないの?」 「こういう個人でやってるお店の方が独身の俺には案外いいんだよ。思い切って入ってみたらハマっちゃって。お店の人とも仲良くなれたし」 確かにそうかもと納得し、暖簾をくぐると大将の奥さんであろう人が笑顔で挨拶してくれた。内藤が返す爽やかな笑顔に対して俺の笑顔はぎこちない。 この人たちは休みじゃないんだよな……。 「あら、お友達連れてきたの? ビールでいいかしら?」 「はい。地元に帰ってきた彼が私に連絡してきてくれたんです」 丁寧かつ嬉しそうに内藤は話す。やはり大学生時代とキャラが違う気がする。本当に嬉しいのか、職業柄そうなるのか。当時よりがたいがよくなっているようにも思う。俺は彼の一人称の変化が気にかかった。 しばらくして、ビールとサービスの枝豆が運ばれてきた。乾杯後に内藤が喋り出す。 「しっかし、まさか小野寺が連絡くれるとはなぁ。あっ、海外行ってたときも連絡くれたか。まぁ、地元が同じで同じ大学で教職課程を頑張った仲だからねぇ」 内藤はどこか感慨に耽っている具合だ。実際のところ、俺には友達と呼べる人が少ない。それでも自分には夜遅くに電話しても大丈夫な友達がいることを信じている。相手がどう思っているのかは全くわからないけれど。卒業してからいつの間にか疎遠になってしまうのは必然的なことなのだろうか。俺にとって人を食事に誘ったというのは奇跡的な行動に等しい。 「なかなか会えてなかったからなぁ」 当たり障りのない台詞を述べる俺。自分から誘っておいてどうなんだ俺。おかまいなしにと内藤は問いかける。 「最近どう?」 こんな質問をされた場合、大抵質問した本人が自分の最近の状況を喋りたい衝動に駆られていることが多いと俺は心得ている。 「まぁまぁってところ。そういう内藤はどうなの?」 一瞬俺たちの間に静かな空気が入ってきた。ビールのグラスを、既に若干据わったような目で見つめている内藤の姿が、駅にぽつんと置かれた公衆電話のように何となく寂しそうに俺の目に映った。 「俺のことはいいから小野寺の話聞かせてよ。今のことじゃなくてもいいからさ」 彼の予想外の返答に驚いたのも束の間、内藤が喋り出す。 「そういえば、小野寺は教員になる気がないのに教職課程受けてたんだよね? 就職活動もしてたね」 「英語を教えたいとか、英語の楽しさを伝えたいっていう気持ちはあったね。内藤は英語科の教員免許だけじゃなくて小学校の教員免許も持ってるんだからすごいわ」 「そうかぁ? 確か小野寺が一人暮らししてたところってテレビがなくってラジオ生活だったよな? 英語科教育法の課題を小野寺の家でやったときびっくりしたわ」 「ラジオを聞きながらやって、あの時は深夜までかかったね。まぁラジオは昔から興味があったよ。ラジオが災害のときにどれだけ役に立つか。それに聞きながら何か他のことができるし」 俺は将来英語業界かラジオ業界かに携わりたいと思っていた。今でもその想いを抱いている。しかしながら、所謂「学校の先生」になりたいという気持ちはあまりなかった。俺みたいなのが生徒指導するだなんて……。真剣に「学校の先生」を目指している人には失礼に思えるだろう。目の前には学生時代からの夢を叶えた内藤がいる。彼は俺のことをどう思っているのだろうか。 「でも、結局卒業してから学校に勤めたんだよな」 「臨時教員だけどね。拾われて本当に運がよかったと思う。教員免許状を取得できてよかったって今でも強く思う。就職活動に失敗して露頭に迷いそうだったし」 学習塾関係の英語が使えそうな業界をメインに俺は就活していた。経営理念が自分の考えとマッチしていて行きたかったところがあったが、そこの面接は三次で脱落。何事もスロースターターな俺が最初に受けたところでここまでいけたのは正直嬉しかった。しかし、その後の試験はうまくいかず。ただ後悔はしていない。 「学校で勤めることが決まる前にどっかの会社で研修受けてなかったっけ?」 枝豆を頬張りながら内藤が訊く。ビールを一口飲んで俺が呟く。 「そうなんだよなぁ……」 あれはあの頃の俺にとってビールよりもはるかに苦みの強い、インパクトの大きなものだった――。 3 何となく五年前の日記帳を開いてみた。俺が日記を書き始めたのは大学を卒業する三カ月くらい前からだ。といっても現在は中途で採用された組織の仕事で書く余裕はなくなってしまい、半年くらい前から日記を書いていない。最初の仕事の時は書く時間がとれていたのだが。 「十二月十七日の土曜日十三時であればオーディションができます。突然で時間が無いのですが、ご都合がつけばお越し下さい」 会社に履歴書を送ってから数日が経ち、その会社からメールを受けた俺は、オーディションを受けさせていただく旨をメールで伝えた。 緊張した面持ちのままスーツ姿で臨んだオーディション。その会社の代表取締役と直接対話するものだった。量の少なめな筆記試験を終えた後、その伊集院という方との対話の中で、関連業界でインターシップしたことや将来的には自分自身で興してみたい気持ちなどを話した。 結果、俺はオーディションに通った形になった。そこで研修を受けさせていただけるようになり、研修の結果次第ではその会社で働けるという。 心躍るってのはこういうことか。 大学卒業が迫った時期に何とか通過できた事実と自分の興味ある業界で働けるかもしれないという感情が化学反応を起こしたような気分だった。 「卒業論文を提出した後の、来年一月十五日以降から研修を受けさせていただいてもよろしいでしょうか」 当時の自分は大学生。学業を疎かにすることはできないし、卒業できるなら卒業した方がいいと考えていた。演劇部を引退した俺は、同じ代の仲良かったメンバーと主催する演劇イベントの準備に取り組んでいた。歴代の先輩方が実施してきたイベントを主催する側になったのだ。 「大学生活でしかできないことも数多く体験して下さい。この仕事は経験が最も大事です。様々なものを観たり感じたり、自分で体験したりしたことが今後に間違いなく役に立ちます」 会社の採用担当者からのメールにはそう書かれていた。今俺が取り組んでいることは大学生活ならではのことだと感じていた。 さらには、 「一年位は何も解からなくて大変なことばかりですが、無理せず頑張ってください」 とも記されていた。 あの頃の初心な俺は「何も解からなくて大変なことばかり」というのが業務のことを指しているのだと思っていた――。 4 自分の地元から少し離れた地域密着型の小さなラジオ局の研修初日。俺が通っている大学は県外にあるから、前日に実家へ帰り、そこから電車でラジオ局へ向かった。 現場では、リポートの同行、ラジオCM収録、外郎売の練習などに携わった。外郎売という、喋りを仕事にする人には必須な教材については、演劇部の経験から既に理解していた。ただ、業務内容よりも先ず気になったのは労働形態だ。 この研修にパスして採用されても契約社員扱いらしい。契約期間は明確に定められずにシフト制の労働。いつ勝手にシフトがなくなるかわかったもんじゃない。 「確定申告とかってどうなさっているんですか?」 「個人で行ってますよ。その時期が来たら他の人に付いていったらいいですから」 「は、はぁ……」 メールをくれた採用担当の森畑さんはそう述べた。どうやら伊集院さんは普段はあまり局には居ないらしい。この女性を信用していいのだろうか。 「普通が一番難しいんだ。君には独特の節があるみたいだから注意するように」 この局で長くパーソナリティを務めている、縦にも横にも幅のある恰幅の良い風貌の男性からそう言われた。周り人たちからはタカさんと呼ばれている。 この人も伊集院っていうんだ……。 その人から言われたことを日記に残した。初めての人間にこれだけ言ってくださったことに感謝した。半年ほど現場経験のある一つ年上の女性が次の日から自分に就くことになった。 「局長の伊集院です。よろしく」 ここには伊集院さんが三人もいるのか……。 研修二日目。俺は昨日現場に居なかった女性局長と挨拶を交わした。 この日はリポートへの同行とミキサー業務が中心。ミキサーの位置づけは収録・放送時における録音・音響エンジニアといったところだ。番組で使用する音楽やパーソナリティの声などの管理・調節を行う。俺には非常に興味深い分野だ。 ただ注意すべき点は、このラジオ局の番組はすべて生放送であること。音楽はCDで流すが、CMはまさかのMDで流すことになっている。「いつの時代のラジオ局だろうか」と思いながらも、フェーダーに手を伸ばす俺。初操作の俺は曲をフェードアウトするだけでも手が勝手にバイブレーションを起こした。 「大丈夫なの? めっちゃ手が震えてるけど」 今日から俺に就く、というより人がおらず、入社してから日が浅いという理由で指導役みたいなポジションに行き着いた帆足という女性が言う。この人、自らこのポジションに来たんじゃなかろうか。 「大丈夫です。すみません」 プライドが高そうな帆足さんに俺は恐る恐る答えた。長年スポーツやってきましたといった雰囲気が伺える。 それからというもの、帆足さんとの業務が増加。何かにつけて、「暗い」、「気が利かない」とどやされ、リポートに行けば、問答無用で 「何のためにリポートしてきたのか全然分からない。あんなの意味ないでしょ」 と貶される始末。言葉に詰まらないようにするため、必要だと思うことはノートに書いたのだが。 「あんたさぁ、甘えてんじゃないの? 一番下のあんたが車を運転するのが常識でしょ!」 この人との外出では車の運転は強制的。俺は大学生であって、研修生であって、社員ではない。保険もどうなっているのかわからないし、労働の対価ももらってない。 「スピード出して無さすぎ。マジでクソみたいに手がかかるね」 俺はサンドバックか。ICレコーダーで音声を録音しておきたい気分だ。 局に戻ってからも「暗い」シャワーは降り注ぐ。そのシャワーは帆足さんからだけではなかった。
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Here is my link tree in Japanese. Ken-aka-Yammy Thank you very much for reading! See you Next time!