the Dream with the Occasional Real 5-8 -My Original Japanese Novel-
Welcome to this page! 2017年頃に書いてみた小説もどきを少しずつ投稿してみます。
I will put little by little my Japanese sentences like a novel I wrote around 2017.
日本語のタイトルは「夢、ときどき現実」です。こちらは日本語の小説もどきを、縦書機能を用いて公開しているページになります。前回の投稿(チャプター1-4)は下記のリンクからごらんいただけます。
the Dream with the Occasional Real (「夢、ときどき現実」) 1-4 (in Japanese)
※ユーザーが投稿するコンテンツ等(引用文献等を除く)の著作権はユーザーに帰属します。以下の縦書文章も同様です。(やみぃーノけんChan (Ken-aka-Yammy))
© The author. All rights reserved.
This is my original Japanese short novel series.
The story is written in Japanese and displayed vertically.
「夢、ときどき現実」(©やみぃーノけんChan (Ken-aka-Yammy))
5
長かった一週間を終え、俺はアパートへ向かい、一人暮らし生活に戻った。気持ちを新たに、俺は同じ代の仲良かったメンバーと演劇イベントの準備に取り組んだ。研修のことは一旦忘れたい。ラジオ局での研修を受けていることを誰にも話していなかったことが幸いした。
自分たちのオープニングアクトの脚本を書いたり、後輩が活躍できるように構成を練ったり、それがとても楽しかった。
しかし、次の研修期間がやってくる。自分が携わりたい業界なのに憂鬱。でも「必要ない」と言われるまでは続けたい。
重い足取りで現場に到着後、「マガジン」と書かれたシフトが追加されていた。
「お店を紹介する文章、書いてね~」
と森畑さん。局のスポンサーになってくれているお店の紹介文を書く業務だ。「考えて書く」という表現の機会を与えられた。
この頃からだろうか、俺が書くことを好きだと感じ始めたのは。これまで自分の日記を書いてきたということもあってか、書くことに対して苦はなかった。読む人に届くように、親しんでもらえるようにと、自分で考えて書けるわけだから、きっと楽しいだろうと思った。
だが、喜べたのは一瞬だけ。案の定、それは帆足さんとの業務。
「去年のものを参照にして、言葉の順番入れかえたりするだけでいいから」
仕方なく言われた通りに書いてみる。語順を変えたり、去年の文章に使われていた「☆」を「★」に変えたりして……
「全然変わってないじゃん。しかもさぁ、『星マーク使え』なんて言ってないよね?」
「去年のものを参考にしただけなんですけど……」
そう言って、俺は去年のマガジンを帆足さんに見せる。
「……去年のがそうなっているだけだから」
無茶苦茶だな……。
そしてこの日、ミキサー室にてCM中に起こった一大事。この局のラジオ番組はすべて生放送。ミキサー室には俺と帆足さん、スタジオには重鎮パーソナリティの伊集院さんがいる。
「次のBGMを準備しないといけないからMD取り出して」
得体のしれないものに触れようとするときと同様に、俺の全身に震えが走った。俺は手を動かさないまま固まる。
「何してんの?早くしなさい!」
彼女はボタン一つで恐怖への扉を開けようとしている。彼女の指がボタンに触れる間際、
「音止まりますって!」
俺の叫びはミキサー室に虚しく響いた。帆足さんの手によって、オンエア中のCMが収録されたMDがデッキから顔を出した。
「音が出てないよ~」
森畑さんの声が響く。スタジオの伊集院さんはミキサー室の状況があまりわかっていない様子だ。何も言わずに、帆足さんはMDを入れ直して再びCMを流した。俺は次に流すBGMが入っているCDを準備した。
CM明けの後、数秒間の無音状態は俺のミスとして放送にのせられた。
「若い目は潰しておかないと」
と伊集院さんが上機嫌に喋る。
くそくらえだ……。
6
一大事のあった日の翌日、現場に帆足さんの姿はなく、この日は休みのようだった。
「伊集院さんは一体彼に何を期待したんですか?」
「失敗だったか。確かに今までで一番手がかかるかもしれないが」
「他の人より成長が遅いし、みんなが彼に気を遣っているわ」
パーソナリティ、代表取締役、局長……三人の伊集院さんが俺をつまみにフロアで朝から会話を弾ませている。俺がスロースターターであることが原因なのか、俺の才能がなさすぎるのか……上の人の言葉に辟易状態。本当に大変なことばかりだ。
「そろそろ戦力外通告ですかね」
俺は三人に口を挟んだ。これは俺なりの抵抗だった。局長の伊集院さんが不適な笑みを浮かべて言う。
「面白いこと言うわね。でも、あなたは戦力以前の問題よ」
「じゃぁ、何でまだ研修に来させてる?」と言おうとして言葉を飲み込んだ。
その日の帰り際、既に代表取締役の伊集院さんとパーソナリティの伊集院さんの姿はなかった。もうそろそろ自分は終わりなんだろうと悟った。次の研修日について、局長の伊集院さんに都合・意向を訊いたが、一言だけ放たれた。
「それはあなたが来たいかどうかよ」
戦力以前の問題なのにか……。
もうしんどい……。
何故か真っ直ぐ帰る気にはなれない。何か普段とは違ったことがしたい。どうにでもなってしまえばいいじゃないか。様々な思いが交錯する中、俺はラジオ局の近くにあるカラオケ喫茶に思い切って入ってみた。カラオケ喫茶デビューだ。いつもなら物怖じしてしまうのだが、今日はいける気がする。
「まぁまぁ。いらっしゃいませ」
お店のママさんだろうか。優しい笑顔で出迎えてくれた。
「お兄さん、学生さん? こういったところは初めてなんじゃないかしら。びっくりしたでしょ? まぁ、ゆっくりしていって。お飲み物でも如何?」
「……ホットコーヒーをお願いします」
促されて若干躊躇いつつも、俺は飲み物を注文した。
地下にある喫茶で、広々とした空間。年配の方々が好きな歌を元気よく歌っている。
「ええぞええぞ!」
マスターだろうか。歌の間に合いの手を入れている。俺はボックス席に腰を掛け、ホットコーヒーを待った。間もなくしてホットコーヒーが運ばれてきた。俺は帰りが少し遅くなることを母親にメールで伝え、暫しこの空間の温かい雰囲気に浸ることにした。
自分が歌を歌うわけでもなく、特に何かしているわけでもないのに、なぜか癒されているような気がする不思議な感覚。
しかしながら、帰りの電車、帰りを待つ親のことも気になるので、長居はせずに帰ることにした。
「あらお帰り? 少しは元気になれたかしら? また来てみてくださいね」
出迎えてくれた女性が出迎えてくれたときと同じ優しい笑顔で声をかけてくれた。
「はい、有り難うございます! またよろしくお願いします」
ラジオ局の研修のときとは違う軽快なトーンが出た。
今日のことはしっかりと日記に残しておこう……。
カウンターにて支払いを済ませてカラオケ喫茶から出た俺は、あの温かい雰囲気の余韻に浸りながら家路を急いだ。
次の研修日、俺は再び現場を訪れた。シフト表から帆足さんの名前がなくなっていた。
「彼女なら辞めたよ、自分から」
俺の様子を察してか、森畑さんが述べた。ただ「自分から」というのが本当のことかどうか疑ってしまった。
帆足さんからの雷が落ちることなく、この日の業務を無事に終えた。帰りの電車内では、このラジオ局のこと、自分の将来のことをずっと考えていた。頭に過るのは不安と恐怖ばかり。
帰宅した後、俺は両親に相談した。今までこのラジオ局で起こった出来事をこと細かく話した。
「言われるがままでいる必要はないのだから、自分で見切りをつけるか、相手に見切りをつけてもらうか、どちらかにしたらいい」という両親の意見から、俺は次の日の研修へ向かう前にラジオ局へ電話をかけて自分の身の処置について問うことにした。
7
俺は断った。だが、研修に通った分の交通費が支給された。
「どうやら私の期待通りには動けなかったようだね」
そう言い残して代表取締役の伊集院さんは奥の部屋へと姿を消した。
電話で問うた時は「現場に来るように」としか言われなかったが、現場に来た結果がこれだ。これで大学を卒業してからこのラジオ局に務めて働くということはなくなった。
交通費受取確認のため押印しようとしたとき、そばにいた森畑さんから
「印鑑、いつも持っているの?」
と尋ねられた。いつも携帯していたけれど、
「今日はたまたまです」
と俺は答えた。静かな空気が流れる。しばらくして森畑さんから
「あなたは真面目だからこれから苦労するかもね」
と告げられた。それは何の迷いもない、真っ直ぐな響きを帯びていた。
こうして俺の就活は終了した。
俺みたいに暗くて、気が利かなくてどうしようもない奴は誰も雇ってくれないんだろうなぁ。どこにも決まっていない状況で卒業式を迎えたけど、演劇部の同輩と集まって笑顔になれた。その時を楽しんだ。彼らは今元気にしているのだろうか。
大学を卒業してからおよそ二週間後、幸運にもある学校から臨時的任用者としての勤務の話があった。所謂「学校の先生」になりたいという気持ちはあまりなかったのだが、結局のところ、資格取得に向けて勉強していたことが功を奏したような形になった。英語を教えることができる。その学校の校長との面談を経て、俺はそこで勤めることになった。
「すごいな。そんな経験してたなんて知らなかったわ。民間企業っていうか、ラジオ業界ってそんな感じなんか。しっかし、よく記録に残してるな。俺は5年前のこと、ほとんど覚えてないぞ。」
「ごめん、俺ばっかり喋っちゃって……」
「いやぁ、別にいいよ」
結局俺ばかりが夢中になって話していた。内藤は合間合間にビールを頼んで五杯目。一方の俺は一杯も空にしていない。しかも俺たちは枝豆しか食べていない。よく飽きずに俺の話を聞いてくれたなぁと思う。次は内藤のターンにしたい。
「それで三年ほど学校で働いた後に君は海外へ行っちゃうっていう。かく言う俺は通信制の大学で小学校教諭の免許を取得した後に非常勤講師を経て、試験に合格して小学校に採用されたと」
内藤の二人称が変化した。ワザと変えたのか。
五杯目のビールを空にして内藤が呟いた。
「すごいな、お前」
俺は一瞬ドキッとした。俺も内藤もお互いのことを名字で呼び合っていた。俺も内藤も「お前」という呼び方が好きではない。コントや歌詞などの世界のものだと思っている。その内藤がそんな二人称を使った。完全に酔いが回ってきたのか。
正直言って俺の何がすごいのかわからない。寧ろ、夢を叶えて小学校教員を務めている内藤の方がすごいと思う。
六杯目のビールを注文した内藤が喋り始める。
「人違いだったら悪いんだけど、帆足って人、俺が通っているジムで働いているよ。非常勤みたいだけど」
「えっ? そうなの?」
「俺の職場の人がその人と知り合いらしくってね。俺も会話したことあるけど、お前の言うようにプライドの高そうな人だね。帆足って人、フリーランスのスポーツ評論家を目指してるって話よ」
こういう時、世間は狭いなぁと思う。
「帆足さん、前からフリーランスで働きたかったのかな?」
「単に『先生』って呼ばれたいだけじゃないか?」
俺たちの間に暫しの沈黙が走った。
「そもそも何で海外に行ったんだ?」
内藤が沈黙を破った。昔の俺なら「飛行機で」なんて軽くボケてみたものだが、今はそんな状況じゃない気がする。
「理由は色々あるんだけど……英語にコンプレックスがあったし、海外の人と働いてみたかったし、資格も取りたかったし……」
俺は正直に答えた。実際のところ、当時はかなりの葛藤で揺れていた。
「なるほど」と少し納得した様子を見せた内藤が言う。
「やっぱりそれは自分のためなんだな……」
「まぁそうだけど……」
「けど」の後に続く言葉は特にない。内藤が一体何を言いたいのか身構えた。
8
俺はワーキングホリデービザで海外へ赴いた。英語指導者の資格証明書を取得できる語学学校に通ったり、多国籍な環境で働いたり、更には、現地のラジオステーションにおける日本語グループでボランティアまですることができた。
その中でも印象深かったのは、留学旅行エージェントのインターンシップ。内部のスタッフは日本人だけだから日本語しか使わなかったけど、電話では英語を使う機会が多かった。
それに加えて、俺は英語の関係の詳細情報をウェブページにアップする記事を書く業務に携われた。「考えて書く」機会を得た。それは自分にとって大きな財産になったような気がしている。
その現場環境はあのラジオ局とは違って雰囲気もよくて、貴重な体験をさせていただき、充実した時間を過ごさせていただいた。
実際のところ、俺のワーキングホリデーは全くもって計画通りにはいかなかった。しかし、後悔はしていない。
ただ、このタイミングで俺のワーキングホリデーの話を俺はしたくない。ちゃんと内藤の喋るターンにしたい。
俺が暫し息を整えている間に、内藤が喋り始めた。
「まぁ勿論子どもにもよるんだけど、小学生ってどっちかっていうと無邪気なのが多いと思うのよ」
「確かにそうだね」
俺は当たり障りのない相槌をうつ。
「俺ね、連絡帳にコメント書いたり、学級通信を作ったりしてるんだけど、考えて書くのって結構楽しいんだな」
俺と同じだ。
「今は学校のウェブページの文章も書かせてもらえてるんだけど、これも意外に面白くてね」
これも俺と同じだ。
「俺さぁ、『先生』って呼ばれる人たちばかりの空間で仕事してるんだよ」
内藤の声のボリュームが徐々に上がり始めている。
「『先生』って呼ばれる人たちが子どもに言葉遣いや態度について指導してるんだよ。自分たちは店員や駅人に敬語も使えないくせに。変なプライドが邪魔してんのかね? 先生特有の上から目線ってやつ?」
さらに続けて
「学校の先生もそうだけど、政治家に評論家、小説家に大学の教授。なってしまえばたいして人として偉くもないのに周りから『先生』って呼ばれちまうんだよ。それが当たり前になって悦に入ってしまうんだよ。何なんだろうな、肩書きって。先生って呼ばれることが大切なわけじゃないよな」
ものすごく共感する。あの頃の俺には悦に入ってしまうちょっとした恐怖があったと思う。
「非常勤講師として働いていた学校には、少しの間しか勤務していなかったのに、子どもたちから寄せ書きをもらって泣いたよ。これなんだよ、学校の先生の醍醐味は! 学校の先生は子どもたちに助けられてるんだよ!」
内藤の目は潤んでいる。
「いろんな経験してきたお前が羨ましい。俺、学校の先生しかやってないんだぜ。お前みたいなのが教員に戻ったら、子どもにも保護者にも他の人と違う感覚で接することができるし、違うオーラが出せると思うんだ。勿論、他の仕事でも」
酔いが回ってきたのか、まるで今にも割れそうな真っ赤な丸い風船のように内藤は溢れ出しそうな涙を必死にこらえている様子だ。
「小野寺……お前今幸せか?」
帰国後すぐに俺はとある知り合いからスカウトという形で仕事を紹介された。返事を急かされ、業界研究する時間さえも与えられず、自分の目指した分野でもなく、結局その仕事に就くことになり、予想外にも研修もないままに働いている。
海外へ赴いて自分なりに活動したことは全くもって何の役にも立っていない状況。現状を変えられるのなら変えたいが、まぁ声をかけられるうちが花なんて思って……。あの時に比べたらまだいいような気はするけど、後悔は……。
「運はいいのかもしれないけど……」
俺は少し濁して答える。内藤はビールグラスの上部を掌で掴んで、ビールを一口飲んで言った。
「でもよぉ、何でだろうな……。俺、夢を叶えたはずなのに全然幸せじゃない!」
間違いなく彼は真面目だ。ぽつんと置かれた公衆電話が自分をアピールするがために自ら鳴り始めた。
贅沢な悩みだ。内藤も俺も。
「お前、他にまだ夢があるだろ?」
内藤の口調が段々と荒くなっているような気がする。俺は沈黙する。
「あるんだろ? 言ってみろよ!」
何だか警察の取り締まりっぽい。俺はここでも正直に答える。
「自分のつくった曲をBGMにして、インターネットラジオを英語でやってみたいと考えてる」
英語に携わること、ラジオに携わることに憧れが未だに強い。勿論、後に魅力を感じて夢中になれると思った考えて書くということにも。
「へぇ」と声に出さないまでも、そう言いたげな表情を内藤は浮かべている。
「お前の夢、きっと叶うよ」
ビールを一口飲んでさらに言う。
「ただ、それが誰か人のためならな」
俺はゆっくりと息を飲み込んだ。
次のチャプターはこちら!「夢、ときどき現実」Chapter 9-11(2021.11.08アップ)
Here is my link tree in Japanese. Ken-aka-Yammy Thank you very much for reading! See you Next time!